夏の陽射しが厳しい今季、ワタシは出不精になっていたのである・・・
いや出不精というよりは休日の雨が連続したおかげでほとんど釣行に行けなかったわけなのだが、こうも立て続けに釣行が中止になると“投げ方”を忘れてしまうのではないかという不安に駆られてしまう。
なんかこう何か月もバイクに乗っていなくて久しぶりに乗ったような感覚といいましょうかね、分かる人には分かると思うんですが。
西伊豆に調査に行ってはみたものの、8月の猛暑日は小鯖しか回っておらず目ぼしい釣果をあげることがなかったというのもモチベーション低下の一因だった気がする。
9月に入ってようやく多方面から釣果の連絡を受けていた折、イマガワ氏と城ヶ島に行く算段がついたものの時間の制約もあって“時合”なんて魚にとって都合のよい時間帯に予定をあわせることはできなかったんだよね。
この日は呑気に16号のファミレスを出たのが午後8時を過ぎたころで、高速を飛ばし城ヶ島の駐車場に着いたのが午後9時という希に見る“やっつけ仕事的釣り”感が満載だったんだけど、こういう時が一番釣れるという妙なテンションだったイマガワ氏の心持は如何程だったのだろうか・・・・
“時合”なんてそんなものは関係ないんじゃないか、海に魚がいれば釣れないことはないんじゃないか、夜は魚の活性が上がっていなくもないかもしれない可能性はあるんじゃないか、と、とにかく竿をたらせば問題ないというなんの確信も持てない釣りになりそうな気配があったのだが。
そんな不安をよぎらせつつ磯に着くと、オキアミの解凍を断念していた我々はすでに完成されているパック入りのコマセをバッカンに満たしそそくさと釣りの準備を開始したのである。
なぜパックコマセなのかって・・・そりゃオキアミの3kg板があればベストなんだろうけどさ、夜の8時にオキアミ買っても解けるわけないし、狙うのはアジとかサバなんだからいいじゃない別に。
内心はほんとにそれでいいのか?とは思っていたんだけど、海水で解凍を待ってから釣りを開始する時間を考えたらこれがベストだろうということになってしまったんだから仕方がない。
前年の全く同じ時期に同じ場所でグレの40オーバーやカツオをあげていたことは頭かすっぽり抜け落ちてしまっていたような気がする。
バッカンの底に溜まったパックコマセ。
さて本日のタックルは
宇崎日新 INGRAM ブラックエディション 4-550
ABU Big Shooter WM60
暗い磯でもバックラしずらい安心タックル。
やはりマグブレーキの調整にアクセスしやすいリールは夜でも非常に重宝できるんだよね。
WM60のマグブレーキは夜はMINから2メモリ戻し。
WM60はマグ最小で遠心ブレーキを全て抜けば120m程度投げられる潜在能力を持ってるからブレーキのアクセスのしやすさは非常に使いやすい。
また、手前に浅い磯や、離れ磯がある場合でも超ハイギアで仕掛けを速いスピードで引っ張ってこれるから巻き取り時の根がかりにも強いっていう。
こういう時に必ず突っ込まれる“だったらスピニングでやればいいじゃないか”というご指摘は勘弁していただきたい。
とにもかくにも磯と磯がVの字なる間を狙って仕掛けを投入し始めた。
暗い海に漂う二つのウキ。
2投目にしてまさかウキが沈もうとは夢にも思っていなかった。
まぁ、自分のウキではなかったのだが・・・
イマガワ氏が竿を煽り仕掛けを巻くが、がまかつの旧式竿は強く、軽くしなる程度で手ごたえはあまりないようだがサバかもしれないとのこと。
さてズルズルと手前によってくる魚を見て、ワタシはアッとなってしまった。
深海魚だコレ~ (ムツ)
まぁ小さいサイズはたまに釣れるんだけど城ヶ島の浅磯でこれ釣れるんだね。
塩焼きで美味しそうなサイズだったのでキープ。
城ヶ島はあまりいい思い出がないが、早々にして釣果が出るとモチベーションが上がってくるから、これは貴重な1匹と言えよう。
食卓に並ぶ魚をとパックコマセをカゴに入れては投げ魚を寄せるもワタシのウキには一向にアタリの気配がない。
場所的には過去40オーバーのアジやサバが釣れている好ポイントだけに期待は膨らむが、やはり時間と餌が・・・・
そんなことを考えているとイマガワ氏がまた竿をあおっているではないか。
ウキに若干アタリが出たようなので巻いているとのことだが、竿は曲がるどころか直線的である。
ただあがってきた魚はまさしく我々が求めていた魚だった。
アジだ!
そこそこのサイズだが刺身で楽しめるサイズであろう。
寝ぼけたアジでなければ、コマセに寄って数が釣れそうな予感がしたのでワタシは手返しよく仕掛けを連投しはじめた。
これくらいのアジが数釣れてくれればそれなりに食卓は潤うのだが1匹ではちょっと物足りない。
しばらく仕掛けを投入するがなかなか次のアタリがやってこない。
仕掛けの投入頻度が少なくなり、遠くに漂うウキをボーっと眺める時間が増えてくると、我々の背後で何か気配のようなものを感じはじめたのだが、暗闇でその気配がなんなのか気づくのにかなりの時間を要してしまった。
カサカサと音がして振り返っても何もいないので風でゴミ袋がはためいたものだと思っていたのだが、竿を置いて後方の道具置き場に近寄ると磯の色と同化して目だけ光っていたそいつがいたのである。
磯の色と同色で一瞬見ただけでは気づきにくい。
荒波のかぶる磯の先端だがこんなところまでやってくるとは・・・
磯場で育つとこのような“磯カラー”の猫が適応していくのだろうか(普通の猫です)
もの欲しそうな目でこちらを見てくる。
手で合図をすると近くまでやってくるがどこか境界線のようなものを張っていて、一定の距離を保ち、それ以上の距離に入ろうとすると途端に離れて行ってしまう。
この猫の許容半径は約50cmほどである。
手を伸ばして捕まえようと思ってもギリギリ逃げきれる絶妙な境界線である。(決して捕まえたりなどはしません。)
野良にしてはなかなかいい毛並みだ、いいものを食っているのであろうか。
まったく釣果が出ず疲れ切っていたワタシに癒しを与えに来てくれたのかと一瞬思ったのだが、狙いはどう考えたって釣ったアジに決まってる。
しかしアジをあげても持って帰らずにここにとどまってくれるのならまさに天から授かりし天使の猫なんじゃないかと。
そんな勝手な妄想を膨らませていたのはすでに12時をまわり、何も釣れずボウズであったワタシの精神状態が極度におちこんでいたからだろう。
ワタシはためしにアジを手にもって目の前でブラブラさせてみたが反応はない。
やはり癒しを与えにきて・・・
しかしアジを磯に置くとものすごい勢いで前脚であアジを弾き飛ばし、飛んでいったアジをくわえてどこかにいってしまった。
結果は分かっていたが一連の動作と距離感の手慣れさを目の当たりにすると実に悲しいもんである。
その後しばらくねばってみたものの二人のウキに反応が出ることはなかった。
ムツはまだしもアジを1匹持って帰ってみたところでどうにもならんから、やはりあのアジは猫の餌として活用するのがベストだったのだ。
その後ムツ1匹でもどうにもならないんじゃないかということでムツも餌になったのだが、ならばムツとアジならどうにかなったんじゃないかということになったがすでにアジはワタシの独断で消えていたのでどうにもならなかった。
そんなこんなで結局お持ち帰りできる釣果は全て猫の餌になってしまったのである。
城ヶ島の夜釣りは猫の餌以上の釣果を望むべし。
帰りがけに土産屋の前を通ると先ほどアジをくわえていったと思しき猫がふてぶてしくカウンターの上で寝ていた。
これのどこが天使なのか、一瞬でもそう思ったワタシは餌になったアジを悔やんだ。
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