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  • 執筆者の写真籠師会

伊豆大島の超一級磯、赤岩で遠投カゴ釣り。幻の高級魚現る。




 秋も終盤に差し迫ったころ、青物欲がうずきだしたワタシは、もういてもたってもいられんぞという状態がしばらく続いていた。


今シーズン伊豆大島には何度か足を運んでいたものの、なかなか本域で釣りができていなかったせいか青物に対して余計欲求不満だったといえる。


言わずもがな似たような境遇に置かれている人物はそこかしらにいたのだが・・・朝、東海汽船の待合所にいたOKN氏のスタイルはまるでそれをあざ笑うかのようであった。


なにせ釣りの道具という道具は一切持っておらず、まるで“大学生の通学姿”と揶揄されてもおかしくないレベルの軽装だったから。


この時期青物欲のせいで頭がおかしくなってるような釣り人が見たら、「何しに来たんだ君は、えっ。そんなんで青物が釣れるのか、おっ。出直してきたらどうかね、はっ。」とかなんとか言われて散々な目に合いそうじゃない。


まぁ北海道に釣り具があっちゃ持ってこれるわけないか・・・


そう彼は北海道の仕事先から一時的に東京へ戻った際に釣りに来ているのであった。


彼用の竿とリールを担いで持っては来たが、果たして仕掛けはちゃんと持ってきているんだろうか、という疑問はぬぐい切れなかった。(あとで確認したらちゃんとウキとカゴ持ってたけど・・・笑)


そんな疑問をいだきつつ、我々は朝のジェット船に乗り込み、伊豆大島に向かう運びとなった。





 岡田港に到着した我々は早々に常宿に荷物を預け、釣り具を車に積みホームである泉津の地磯へと向かった。







地磯へ続く林道の入り口までやってきたはいいが・・・


うっ・・・


ナニコレ・・・いつにも増して入口の茂みが濃くなっている。


後続車もいるからここは間・髪を入れず突っ切るしかないか・・・


ここを車で突っ切っていく勇気ってなかなかないよな、なんて言いながらエイっとむりやりハンドル切っちゃうと意外と行けちゃうんだよね。


ま、軽じゃないと絶対無理だけど。


船から降りるとき、いや~な風の吹き方してたんだけど、車から降りるときもそのいや~な風が残ってたからひょっとして、とおもってちょっと下ったところから釣り場のポイントを確認してみると、、、







あ、ダメだこれ。波かぶっちゃってる。


北東の風がもろに磯にあたり、うねりをともなった波がポイントに押し寄せていた。


ほかの磯に比べてあまり波の影響を受けないポイントだから、ここがダメなら裏磯は全滅かなぁ。


ただここで呆然として突っ立てるわけにはいかんのだよ、


なぜなら前日の船は夜船ではなく朝のジェット船で来てるからね!着いたの10時過ぎだからね!もう時合過ぎてるんだからね!


さぁどうするどうする??なんていいながら、泉津の地磯を抜け出した我々はすでに戦意を失いつつあったが、なんとかモチベーションを上げつつ車を発進させた。


こうなったら島を時計回りにグルっと回る島一周偵察コースか・・・


結局波の様子とか風の様子見ながらグルっと回ってもいいことなんて何もないんだけど。


我々の戦意は筆島を超え、波浮港の立ち入り禁止を横目に見たところで完全に消えつつあったと言えるだろう。


表磯は車で入りづらいとこ多いし、ポイントに行くまでが大変だからね。(階段地獄の磯どこだったけな?)


波浮を超えたあたりで、伊豆大島の一級磯として名高い“赤岩”とかいうメジャースポットあったな、なんて話をしていたら、まるで吸い込まれるようにして向かっちゃったんだから不思議よね。


もう“赤岩”ってワードが出ただけで誰も異論を唱える余裕が無いほど切羽詰まってたんだろうな。


車で行くのしんどいし、ポイント着くまでに半分以上体力使っちゃうような場所だから昔から敬遠してたんだけど、“もういっか”的、なかばヤケクソみたいな面持ちだったな。







狭い林道を超えた先にある赤岩駐車場。


すでに先客の車が2台停まっていた。


遠目からでも左奥で釣りをしている人々が見えた。


赤岩に着いたころにはもうお昼を過ぎていた。







恐怖の赤岩山入山口。







ポイントまでの険しい岩山を颯爽と超えていくOKN氏。


釣りに向かう姿とは到底思えないが、手にぶら下げたオキアミ3KGと付け餌を見るとやはり彼は釣りに向かうのだろうか。




我々の今回のポイントは赤岩の最奥右手(コンクリ)からの釣りとなった。







二ツ根を右手に見ながら正面に遠投するOKN氏。







しばらく遠投すると抜き上げサイズのメジナが連発するがなかなか本命は来ない。



OKN氏の遠投を横目に見ながらワタシは棚をいつもより浅くして遠投を開始した。


一投目にしてウキにモゾモゾと何か触れるような感触があったが、まさか二投目にして強烈にウキを沈める魚が当たるとは夢にも思っていなかった。


ワタシはたいてい磯で釣りを開始すると、ポイントにオキアミが入ってない場合、魚も回ってないだろうからと最初の三投目くらいは大目にオキアミを打って様子を見るのが流れなのだが、予想もしていなかった鋭い当たりを前にしどろもどろになってしまった。


美しい赤岩からの景色を眺めながらふとウキに目をやるとちょうどウキが消し込む瞬間だった。


次の瞬間には道糸がスーッと沖に伸び、置き竿がカタカタと揺れ始めていた。


ワタシが竿を持とうとするときにはもう竿に魚の重みが乗っているような状態だった。


危なっ・・・竿持ってかれるとこだった・・・そんで重い・・・


竿がしなったまま道糸が張ってビクともしない。


ググっと右手で強引に竿をあおると竿先にグングンと引き込んでいく魚のあたりがある。


今回のタックルは離島向けのヘビータックルではなく、ハリスも3.5号と多少心もとない仕掛けだったから、竿で強引に魚を寄せるのは得策ではない。


ワタシは時間をかけながらジリジリと寄せる持久戦へと持ち込むことにした。


ちょうどそのころ横で釣りをしていたOKN氏がただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、ワタシのファイトの横でタモの準備に取り掛かろうとしていた。


タモなんて用意してなかったよ・・・だって二投目だからね。


ジリジリと手前20m寄せる頃になると魚は右往左往しながら暴れまわり、手前の沈み根に突っ込みはじめたので、強引に竿をあおってやる。


手前まで来ると、もうサビキに大型のサバが5匹くらいついてるんじゃなかろうかという暴れっぷりだった。


青物系に間違いないなと思ってはいたが、ウキが水面に上がり始めたころあいでようやく魚の全容が姿を現した。


水面をスーッと横切るギラギラとした白銀の魚体に、海を高速で泳ぐことに特化した特徴的な細い尾びれがたなびく。


メジマグロ!?いやカツオか???







OKN氏にタモ入れされ、あがってきたのは幻のカツオと噂される“スマ”だった。


およそ60cmの魚体は2.8kgとでっぷりと太り、“全身がトロ”と称されるにふさわしい、まさに食べごろと言わんばかりの趣だった。


群れを成さず、一匹オオカミのように活動するスマがカゴ釣りの仕掛けにかかるのは非常に珍しいが、磯のフカセで稀にかかるという話を後に聞いた。


二投目にして釣り上げたスマでワタシはもう釣りに満足してしまって、その後しばらく釣りに集中できなかったという。


当然クーラーボックスやスカリを持ってきていなかったワタシは、そのスマを地獄の赤岩峠を越えて車まで運搬しなければならないことを悟り、意を決して片手に担ぎつつ車へと戻った。




釣り場に戻ったワタシはさらなる大物を求め同じポイントに仕掛けを投入し続けた。


開始したのが13時過ぎで、スマのアタックの後釣り場に戻ったのがもう2時を超えていたから、夜装備を備えていない我々は17時を目途に磯から撤退しなくてはならなかった。


時間があまりとれないから、ここは手返しを早くして同じポイントにオキアミを打っていかねば。


その後、何投かしているとまたスッとウキが消し込んだ。


巻いているとすぐに分かる伊豆大島ではお馴染みの魚、イサキが姿を現しはじめた。


赤岩であがるイサキは化け物クラスが多く、40cmクラスのイサキがぽつぽつと釣れはじめたから驚く。


OKN氏の竿には相変わらずメジナがまとわりついているようだ。


その後イサキを数匹追加し、16時を超えると辺りが薄暗くなりはじめたのでやむなく納竿という流れになった。


結局ワタシは行きと帰りに加えスマの運搬を含め地獄の赤岩峠を3往復もする羽目になってしまった。


当然ワタシの体力は帰りの峠で底をつきかけていたから、夜釣りまでのモチベーションも底をつきかけていたといっていい。


宿に戻った我々は少し休憩をとった後、なんとかモチベーションを取り戻し、重い足取りで岡田港へと向かった。


しかしこの日、岡田になぜか大型の船舶が停泊しており、エンジンの騒音と眩いばかりの光のせいで魚の活性がかなり下がっているような状態だった。


案の常竿を出してみたが、いつものようにポツポツあたるイサキのあたりはおろかサバのあたりすらもなかったため、体力もスレスレだった我々はさっさと岡田での釣りを諦め宿に戻ることにしてしまった。


その後泥のように寝入った我々の釣行はそれで幕を閉じた。



今回は幻の魚“スマ”に加えて大島ではお馴染みのイサキの釣果もあがり、食卓を賑わすには十分な結果になったんじゃないかな。






持ち帰ったスマは・・・







ドーン。


45cmの俎板からはみ出る丸々と太った60cmの魚体。







まずは固い背びれまわりの鱗を取り除き







頭を落とす。







三枚におろして柵にする。


ハラミの柵を切ると包丁に脂がベットリとまとわりつき、脂ののり具合を物語っている。







まずは新鮮なうちにお刺身に。


カツオ独特の血合いによる酸味が程よく抜け、脂ののりはマグロと同等かそれ以上。


カツオとマグロの良いところどりといった味わいで、癖もなく非常に食べやすいが、かすかにカツオの食味の片鱗を残している。


その身はまさしくカツオでもなくマグロでもなく“スマ”という魚なのだろう。







残りは表面をさっと炙ってタタキに。







ポン酢と合わせていただくと芳ばしい風味が加わりこれぞまさに究極のカツオのタタキ。


う~むこれは今まで食べた事のない絶品だ。




ワタシは舌鼓を打ちながらあの赤岩の地獄の道のりを思い返していた。


地獄と引き換えにスマの恵みに巡り合えたはいいが、もしスマがあがらなかったらどうなっていたことやら・・・


そういや再来週またOKN氏と赤岩に行く予定入ってたな・・・





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